1. TOP
  2. 組織づくり
  3. 人事考課制度とは。目的・意味・方法や効果的な制度設計を解説
人事考課制度とは。目的・意味・方法や効果的な制度設計を解説

人事考課制度とは。目的・意味・方法や効果的な制度設計を解説

この記事は6分ほどで読めます (約3320文字)

人事考課制度は、多くの企業で取り入れられている制度。

賃金設定・昇進などの待遇を決定する際の参考材料として活用されています。

今では昇給や昇進の基準だけでなく、従業員のモチベーションの向上や能力開発や生産性向上のためにも重要となっております。 人事考課の基本から運用におけるポイント、効果的な導入方法について解説します。

人事考課制度とは

人事考課制度とは、社員の成果・能力・勤務態度などを一定の基準で公正に評価し、その評価内容を賃金設定・昇進・能力開発などの人事に反映する社内制度のことを言います。 よく聞く言葉に「人事評価制度」がありますが、大きな意味の違いはないとされています。 使い分けをする場合、「人事評価」は「良し悪しを判断すること」であるのに対して「人事考課」は「評価結果をもとに、賃金設定や昇進を行うこと」とする傾向があります。

人事考課制度の目的

人事考課制度の目的は大きく分けて、 以下の3つと言われています。

  • 賃金設定・昇進などの「待遇」の根拠を明確にすること
  • 会社の目指す姿を可視化する
  • 社員のモチベーションの維持・向上

人事考課制度を取り入れる以前の企業では、従業員の評価を上司や人事あるいは同僚の評価を相対的に見る・各部門に定量的な目標を作り達成度を組織単位・個人単位で見ていくと言った施策を行い、定性・定量の両面で客観的な評価をつけるために苦心してしました。

しかし、客観的な評価を行う上で体系化した制度になっていない場合、以下のような問題がおきてしまい、従業員に不公平感を感じてしまうことが多くなってしまいます。

  • 上司の印象によって評価が変わる
  • 定量評価に偏重し企業倫理の欠如した社員が高評価を受けている
  • 理念の浸透につながらない。
  • 社内政治の強い人が評価を受ける
  • 従業員同士の好き嫌いが反映されてしまう

中立・公正な評価をしようと行った施策が、従業員に不公平を感じさせ、満足度を下げてしまうことになりかねないです。

そのため、人事考課制度は一定の基準による公正公平な評価を根拠にすることで、待遇に対する社員の不公平感を取り除き、会社の目指す方向性を評価軸に組み込み、社員が全員で同じ方向を向む環境を作り、社員のモチベーションの維持・向上を持続させるために、賃金がアップだけではない評価軸を設けることが重要になります。

たとえ評価が良くなかった場合でも社員のモチベーションを維持・向上させるという大切な役割が人事考課にはあるのです。

人事考課のメリット・デメリット

人事考課制度のメリットやデメリットについて説明します。
メリットだけでなくデメリットも理解ししっかり対策を講じることで、より効果的に運用を行うことができるでしょう。

人事考課制度のメリット

目的にも記載しましたが、会社の方向性を可視化し、モチベーションを維持・向上に寄与させることが重要。

人事考課制度のメリットは多く存在しますが、主なものを4つ紹介します。

会社の方針や理念に基づいた行動規範を示せすことができる

会社のビジョンに基づいた評価基準を作成し示すことで、会社のビジョンを社内全体に浸透させることができます。どのような能力・行動が高く評価されるかの明確な指針があれば、社員は自分の目指すべき姿がイメージしやすくなります。

従業員の成長を促せる

人事考課では、社員に合わせて目標を設定しその達成度などをもとに評価を行います。目標が達成できた時「成長した」と言えるのはもちろんですが、もし目標が達成できなかった時でも、改善点や問題点などを明確に示すことで今後の成長を促すことができます。

従業員のモチベーションの向上や維持につながる

一定の基準・公正公平な視点で行われる評価には信用性があります。信用できる基準で高評価を得るということは自分の成績・行動が多くの人から認められたという確かな証拠となり、社員本人の自信や満足度につながります。こうした評価が待遇にしっかりと反映される会社であれば、さらにモチベーション向上の効果があるでしょう。

上司とのコミュニケーションが円滑になる

目標設定や評価を行う過程で評価者である上司と評価対象である社員が話し合う機会が増え、それが上司と部下の相互理解を深めます。
相互理解が深まれば、普段の業務でも意見や疑問を口にしやすくなるなどコミュニケーションが円滑になり、業務の改善や職場環境の改善につながることも期待できるでしょう。

人事考課制度のデメリット

人事考課制度は多くのメリットがある一方で、運用方法によってはデメリットと感じる部分もあるため注意が必要です。
デメリットになり得る点は主に2つあります。

時間や手間がかかる

会社目標の設定や社員ひとりひとりとの面談の設定・実施、そしてフィードバック…。人事考課の運用には事前準備と多くの時間を要します。
普段の業務に取り組みながらの運用になりますので、社員、特に評価者である上司の負担が増加してしまう恐れが。スケジュールにゆとりをもって無理なく取り組める環境作りが大事となるでしょう。

社員から不満が出る可能性がある

人事考課制度を考えても、従業員との合意形成ができていないと逆効果になる場合もあります。

従業員の納得のいかないものであった場合、その基準によって下された評価に不満を溜めてしまう可能性があります。
努力が正当に評価されてないと感じたら社員のモチベーションは下がってしまい離職の原因にもなり得ます。そのくらい重要なファクターとなっていますので、評価基準の設定は特に気を付けたいところです。

人事考課制度の考課対象

人事考課は、“成績(業績)考課”、“能力考課”、“情意(仕事・業務への姿勢)考課”の3つの観点から行われるのが一般的です。

ひとつひとつ解説していきます。

成績考課・業績考課

成績考課・業績考課は、会社あるいは所属部門全体の目標達成のために策定した個人の目標に対し、どの程度の達成率であるかを評価する項目です。

業績は比較的数値化しやすいことから公平な評価がしやすい一方、社会情勢や経済状況の影響も受けるために、努力しているにもかかわらず評価が低くなってしまうという可能性もあります。

営業部門なら営業成績、人事部門なら採用率や採用コスト、離職率・内定率などがわかりやすい指標となりますが、数値化がしにくかったり、成果が分かりにくい職種や部門もあります。そう言ったところの評価をどのように可視化していくか?他部署と比較して平等性を担保する方法を考えるのも重要なポイントとなります。

能力考課

能力考課は業務知識、専門知識、判断力、折衝力、提案力、指導力などの能力を評価する項目です。
たとえば、突然のトラブルに対してどう対処したか、難易度の高い業務を完遂したかなど、業績の数字には表れない社員個人のスキルを公平に評価します。

定量化にこだわりすぎると、量もしくは質に偏ってしまうので、バランスが重要になります。

情意考課

情意考課は日々の業務の取り組み方や仕事への姿勢を評価する項目です。
会社のビジョンに沿った行動をしているかどうかもこの項目で評価します。
業務への姿勢・態度の評価には主観が入りやすいため、上司によって評価にバラつきが出てしまう恐れがあるので、統一した指標、行動指針や、数値化できるツールなどを利用することが必要になります。

人事考課制度の手順

人事考課制度を運用する際の手順には大きく3つのステップがあります。

それぞれのステップでのポイントもあわせてくわしく説明します。

目標設定

社員の目標の設定を行います。事前に会社や所属部門全体の目標・評価指針を示しておくことが重要です。社員ひとりひとりが会社の目標・指針を踏まえた上で目標を設定できるようになることに加え、会社のビジョンの浸透にも大いに役立ちます。

目標設定は上司と本人の双方が納得できるものになるようによく相談しましょう。その際、気を付けたい点は二点あります。

一点目は 定量的な目標 です。目標は明確であるほど客観的に評価でき、信用性が増します。極力数値化できるものを設定することが望ましいでしょう。

二点目は 適切な難易です。たとえばわざと低い目標を設定し高評価を得る社員が出てしまう恐れもありますので、社員ひとりひとりに合わせて努力すれば達成できる程度の目標を設定することが社員の成長につながります。

自己評価と上司評価

評価対象期間の終了後、社員は自己評価を行います。対象期間に行った業務内容を振り返り、設定した目標に対する達成度や目標達成に向けて何をしたかなどを極力客観的な視点でまとめます。その他、評価に関係すると思われるエピソードがあれば併せて報告することが望ましいでしょう。

上司は社員の自己評価を踏まえながら、社員の目標と実績をもとに最終的な評価を行います。この時、上司は事実を評価基準に沿って客観的に評価しなくてはなりません。個人的な感情や付き合いの程度で評価に差が生じてしまわないよう、公平な目線を持つことが重要です。

上司から本人に対するフィードバック面談

社員の評価が決定したら、社員本人へ通知を行います。この時、評価の結果だけを伝えるのではなくなぜそのような評価になったのか、評価の根拠を明確に伝えることがポイントです。
このフィードバックを行う理由は二点あります。

一点目は 評価を納得してもらうためです。評価の根拠となる事実、会社の意図をきちんと伝えることで、社員は与えられた評価を納得しやすくなります。

二点目は従業員自身の働く上での良い点、改善した方が良い部分を理解してもらうためです。

自分の長所と何を改善すべきかが理解できれば、今後取るべき行動を具体的にイメージすることができます。社員のモチベーション向上のために、社員の褒めるべき点と改善すべき点は必ず伝えましょう。

人事考課制度で注意すべきこと

人事考課制度を運用する上で心に留めておきたいことは、人が人を評価する以上はヒューマンエラーが発生する可能性があるということです。
起こり得るエラーのひとつに、評価者の主観や感情による評価のブレが考えられます。
その他にも

  • ある一つの項目を高く評価した際、それ以外の項目でも良い評価をつけてしまう(ハロー効果)
  • 無難な評価にとどめてしまう
  • 評価対象者同士を相対的に評価してしまう

など、評価者の日頃の考え方や癖によって無意識で行ってしまうエラーも存在します。

これらのエラーを防止するためには、個人的感情での判断ではなく客観的思考での判断が下せるように目標や達成基準を明確にしておくことが重要です。

また評価者は、ヒューマンエラーが起こりうるということを常に念頭に置いて少しでも公平な評価が下せるよう心がけましょう。

人事考課制度は会社全体のモチベーションアップにつなげる

冒頭でお伝えした通り、人事考課制度の目的は「賃金設定・昇進などの「待遇」の根拠を明確にすること 」「会社の目指す姿を可視化する 」「社員のモチベーションの維持・向上」の3つ。どれも重要ですが、会社にとって大きな効果が現れるのは従業員のモチベーションの維持・向上。社員ひとりひとりの士気は会社全体の成長に関わってきます。

従業員のモチベーションの維持・向上のため、人事考課制度の運用は「基準に沿って評価をしたらそれで終わり」ではなく、その評価をどう本人に伝え前向きに捉えてもらうかが大事なのです。

本人に伝える時に積極的に使いたい方法として「プロセス評価」というものがあります。途中経過や変化を褒めることですが、心理学では「相対評価」「絶対評価」「結果評価」「プロセス評価」の4種類の評価の中で一番満足度が高いのはこの「プロセス評価」だと言われています。

目標を達成できなかった社員に対しても「プロセス評価」の視点で伝えることで、来期以降の目標・行動に対するモチベーションは良い方向へ変化するでしょう。そうなれば、必然的に会社全体のモチベーションの向上につながるのです。

人事考課制度とあわせて使いたいコミュニケーションツール

人事考課の面談は年に数回です。年に数回の面談で社員のプロセスを評価するのは難しい、面談の機会を待たずにプロセスを評価できたら、と感じる人もいるかもしれません。

そんな時に使用したいおすすめのツールが「Agelu」です。
「Agelu」では社員同士が好きな時に感謝の気持ちをやり取りできます。つまり、日常的にお互いのプロセスを褒め合うことができるのです。人事考課制度と合わせて「Agelu」を使えば、社内全体の更なるモチベーションの向上はもちろん、コミュニケーションの活性化も期待できます。