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従業員エンゲージメントとは事例から見る向上方法

従業員エンゲージメントとは事例から見る向上方法

この記事は6分ほどで読めます (約3573文字)

従業員エンゲージメントは事業戦略を、経営者を含む従業員全員に浸透させるために有効な手段で、企業も従業員も成長するために必要な考え方。

各社様々な取組みを行っている一方、ワークエンゲージメントや従業員満足度といったものとはどう違うの?という疑問を持つ人も少なくありません。

ここでは、従業員エンゲージメントの意味をはじめ従業員満足度やワークエンゲージメントとの違い、向上方法や事例、またどうやったら施策を定着させられるか、従業員エンゲージメント向上のためのサービスまで説明します。

従業員エンゲージメントとは

SNSが定着した今ではエンゲージメントという言葉は広く使われています。意訳すると、思い入れや愛着、絆を表す言葉。

つまり従業員エンゲージメントとは従業員と企業や同僚の絆の深さを示す概念です。従業員の会社に対する愛着や信頼をどれだけもち、企業にたいして貢献したいという気持ちを持っているかどうかの指標となるものです。

日本に従来からある考え、企業や組織に対して忠誠を尽くしたり、会社へ恩を返すためにご奉公するといった愛社精神とはちがい、歯車となって働くのではなく、従業員が自発的に組織に貢献するために社内外を問わず自発的に行動する推進者となる人物を育てることになります。

従業員エンゲージメントの定義

GEのジャック・ウェルチ元会長が、1990年ごろ企業の持続的成長課題として従業員マネジメントを提唱したことから注目された概念。

「人材」、「リスク」、「資産」コンサルティングファームウイリスタワーワトソンの研究では、

従業員エンゲージメントを「会社・組織が成功するために、従業員が自らの力を発揮しようとする状態が存在していること」と把握している。
引用:エンゲージメント:back to basics!~この10年間、従業員意識調査の焦点はなぜ「エンゲージメント」なのか?~

としています。

この状態を作るために、

①理解度(Rational):会社の進む方向性を具体的に理解、腹落ちし、それを支持できる

②共感度(Emotional):組織(同時に仲間にも)に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持っている

③行動意欲(Motivational):組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある

の3要素が必要としています。

3つの要素が成立ことで、企業との絆、同僚との信頼が生まれ、自主的に貢献しようという環境がつくられるのです。

たしかに、会社の進む方向やビジョンを知らずに、信頼できる同僚と一緒に行動しても進むべき道を見失います。また理解も共感もしていても行動意欲がなければ何も始まりませんし、組織や同僚にたいしての愛着がなければどんなに優秀でも誰にも信頼されず、独りよがりになってしまいます。

つまり従業員エンゲージメントの高い企業は目標・ビジョンに向けて従業員同士が手を取り合い自発的に進んでいく状態が作られていく環境が作られており、自然と作られており会社も個人も持続的に成長していく状態であると言えます。

従業員満足度との違い

従業員満足度と従業員エンゲージメントはどう違うのか?何が違うのか?というのが最も分かりにくいですが、大きな違いは以下になります

従業員満足度とは仕事内容や職場環境・人間関係にどれだけ満足しているか?を推し量るもの

従業員エンゲージメントとは従業員が企業や同僚との関係に価値を認め、貢献しようと推進する度合い。

従業員満足度が上がることで、モチベーションが上がり離職率が下がり、生産性が向上することもあります。しかし、従業員満足度の向上が生産性向上につながるとは必ずしも言えません。

例えば、高給をもらって満足度が高い従業員は次の査定での要求は当然より高い給与となります。企業側がその期待値に応えられない場合、逆に満足度の影響が下がり、生産性もつられてしまう可能性もあるからです。

ワークエンゲージメントとの違い

ワークエンゲージメントはバーンアウト(燃え尽き症候群)研究で有名な、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ(Wilmar B.Schaufeli)教授が定義した概念。

仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力・熱意・没頭によって特徴づけられるとしています。

働かなければならないという脅迫観念ではなく、肯定的な働きたいという気持ちを持つことになるので、継続的にハイパフォーマンスを得られる状態になるというもの。

ワークエンゲージメントを高めることでのメリットも計り知れないものがありますが、ワーカホリックと錯誤してしまったり、ネガティブ志向の慎重さを軽んじてしまう方向に向きがちなので注意が必要です。

また、ワークエンゲージメントを高めるためには一人ひとりが自ら変わろうとする意志が重要。そのため、それぞれことなったアプローチを経営者・人事・マネージャーが一体となって行う必要があります。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めるメリットは企業にとって以下のようなさまざまな効果が生まれ、企業価値の向上や持続的な成長につながります。

離職率が低くなる

会社への愛着心が高まる、つまり帰属意識が強くなる状態のエンゲージメントの高い従業員。

企業と従業員の間、同僚との間が強い信頼関係で結ばれているため、転職したいという意識が低くなります。従業員エンゲージメントの高い社員は自発的な貢献、自立自走型の人物ということになるので、企業が最も優秀な人材であることが多いですが、そうであればあるほど、離職する可能性が下がります。

優秀な人材の確保は経営者にとっても人事部にとっても至上命題。

優秀な人材を入れ、定着させるためには従業員エンゲージメントの向上は必要不可欠な取り組みと言えます。

従業員のモチベーションが上がる

帰属意識や誇り、愛着が、企業や組織に対して心理的価値を高めます。そのため給与など条件面だけの好待遇と比較しても、そこで働き続けるという気持ちが強くなります。

また同僚同士、信頼関係が高いため、そこにいても良いという心理が生まれ、ありのままの自分を出すことができるようになります。

その結果、自分がそこにいることの意味を見つけ出し、同僚と協力しながら主体的な行動をとれる心理的安全性にもつながり、モチベーション高く仕事をするようになります。

進んで困難に立ち向かう

会社のビジョンを理解・共感し、そこにいても良いという心理的安全性から、困難な状況や難度の高い課題に直面しても乗り越えていこうとします。単純に満足度の高い状態や愛社精神では自ら課題解決に向けて動くことができません。

行動は変化を生み変化が困難な課題を成し遂げ、個人や企業の成長へとつながります。

顧客満足度が上がる

自ら進んで課題を乗り越える従業員エンゲージメントが高い社員で構成される組織は、率先して課題を見つけ解決へと導きます。つまりサービスのレベルが上がり、その結果顧客満足度が上がります。

顧客からの感謝の気持ちは従業員のモチベーションを上げる良薬。相乗効果でより良い結果が生まれます。

業績の向上につながる

なぜ業績が上向きになるのかはここまでの説明でも理解できると思いますが、サービスレベルや顧客満足度の向上は企業の成績がプラスになる期待が持てます。

さらに離職率が下がることで、社内のナレッジ・ノウハウがたまっていき、信頼関係で結ばれた同僚同士の相乗効果で、業績への直接的な貢献を期待できます。

リンクアンドモチベーションの研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所が2018年9月18日に公開した「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果」で、ES1ポイントにつき、当期営業利益率が0.35%上昇し、加えて翌四半期の営業利益率も0.38%上昇する結果が出ています。

つまり、従業員エンゲージメントの向上は比較的短期間で成果に寄与することがわかったのです。

どのような業種であっても、早期に従業員エンゲージメントを高める取り組みを検討することをお勧めします。

従業員エンゲージメントの向上への取り組み方

前述のウィリス・タワーズワトソンの調査結果によると日本企業の従業員エンゲージメントは低い傾向にあるとされます。ただし、日本人の国民性によるものも多いとされますが、リーダーシップや権限委譲、評価・報酬、業務の生産性などについて、日本が世界に後れを取っているのは否定できません。

エンゲージメントと高い相関関係にあるものは

  1. 経営トップのリーダーシップ
  2. ゴールや目標の明確さ
  3. 直属上司
  4. 企業イメージと信頼性
  5. ワークライフバランスと柔軟性

上記5つがあげられます。

経営トップのリーダーシップとは決してトップダウンのことではなく、期待される行動は、
コミュニケーション・従業員の巻き込み・従業員のサポートのことで、将来の展望を示し、企業ビジョンを繰り返し説明することで浸透させる。そして意思決定の場に従業員を参加させ対話を重ねること。つまり権限移譲ということ。業務の阻害要因を取り除き将来に向けたスキル向上のチャンスを与え支援するような行動を指します。

このような行動が、仕事の面白さや働きやすい環境や文化、スキルとキャリアの開発につながり、魅力的な組織を作る礎となります。

企業ごとにさまざまな特徴があり、完全な正解というものはありませんが、従業員エンゲージメント向上の取り組みとしておすすめな施策をいくつか紹介します。

組織のビジョン・ミッションを浸透させる

従業員エンゲージメントとは、企業の理念・ビジョンに共感した上での自発的な貢献を指します。従業員がビジョンを理解し共感するためには、ビジョンを明確にし、わかりやすく解説することが重要。

会社はどのような方向を向いていて、何を目指しているのか。日々の業務はビジョンに対してどのような役割を担うのか。会社のビジョン、進む未来と自分の行動や進むべき行動が一致していると理解した時、共感が生まれ、従業員エンゲージメント向上が萌芽します。

まずは経営トップの言葉で、会社の指し示す方向を繰り返し説明し、どういう意味なのかを解説することが重要です。

人事評価システムのひとつであるOKRやマネジメント手法の1on1を活用してビジョンについての会話をしたり、座談会やワークショップなどを開催する。会社説明をビジョンを含めて3秒で説明できるようにするなどさまざまな方法が考えられます。

社内コミュニケーションを活性化させる土壌を作る

ここにいても良い、ありのままの自分でいられるという心理的安全性は従業員エンゲージメントに大きく影響します。

同じく、企業の理念やビジョンを浸透させ事業戦略を達成するためには、コミュニケーションを重ねることが重要になります。これって聞いていいのかなといった不安やしらないのは自分が勉強不足だからといった不安を払拭させ、どんな些細なことでも当たり前と思っていることでも発言できる環境を作ることが大切です。

役職や部署、職域に拘らず積極的なコミュニケーションを重ねることで相互理解が深まり、お互いを尊重し会える関係が築けます。

「この会社のために頑張る」を最初から期待するのではなく、まずはこのチームのために頑張りたい、この人のために頑張りたいと思えるような人間関係を作ることが大切。

シャッフルランチや部門横断的なプロジェクトなどを行うことも効果的です。

コミュニケーション活性化のために、業務とは別のお互いが気兼ねなく話し合えるコミュニケーションツールを利用することも必要になります。

Ageluは感謝をポイントにして伝えあうツールですが、つぶやき機能があり、お互いが業務とは関係なく語り合える場がもうけられます。またコミュニティ機能によりテーマに沿った会話をクローズした状態で作ることもできるので、コミュニケーションを活性化させるきっかけづくりを演出します。

またツール導入の最大のネックである高額な導入支援・伴走支援を基本無料で行っているので、従業員エンゲージメントの促進のためにぜひ検討してください。

Ageluオフィシャルから問い合わせる

従業員のタイプを見定める

企業の特徴や従業員の性格、従業員数によって従業員エンゲージメントの向上施策は異なります。しかし従業員がもつ能力や希望を把握し適材適所の人材配置や人材育成を行い、可能性を拡大させることは従業員の肯定感を高め、自信につながります。

また組織の形やマネージャーのマネジメントタイプを把握し、タイプの合う人材配置を行うことで驚くほどの成果を上げることも期待できます。

個々の特性を把握し、組織の形を理解することで、個別のスキル支援やキャリア開発を行うことができるようになります。

Ageluの管理者のダッシュボードでは、チームや組織、マネージャーのタイプが把握できるようになっております。ダッシュボードで相関関係を分析することで一人ひとりの適性だけでなく、相性のよいチームへの配属が可能となっております。

部下への権限移譲

部下に意思決定・提言の機会を与える権限移譲も大切な取り組みになります。

権限移譲というと責任をともなうことになるので、単純に委譲するだけでは従業員は躊躇してしまう場合があります。そのためまずは意思決定の場に従業員を参加させ対話を重ねること。原則否定的発言を避けて肯定的な発言をし、提案を促すことが重要となります。

これにより意思決定を行うことになれて、自らプロジェクトをコントロールすることを学びます。強い責任感が生まれ、課題やミッションをクリアしていく自発的行動の取り方と決断の仕方を生みます。

またより高い権限(責任)に興味を持ち恐れず挑戦するマインドを醸成しできるので多くの企業が悩む中間マネジメント層の育成にも役立ちます。

評価とフィードバックを行う

仕事に限らず人は「自分を認めてくれている」「正当に評価されている」という意識を持つと信頼と愛着をもちます。それが組織の場合は帰属意識につながり、個人の場合は敬意や尊敬にもつながります。他者による承認は自己承認よりも影響が強く、自己肯定感の高まりにもつながります。

自分が認められたという自信は自身の行動に勇気を与え、肯定的な行動につながります。そのためにどんな小さな貢献も見逃さずにフィードバックを返すように心がけましょう。

上司の立場だと欠点がよく見えるものです。しかし欠点を指摘し修正を促したり、あなたはこういう人だからと決めつけ指導するよりも、部下がどんな成果を出したかを見つけ出す努力をし、承認欲求を満たすことのほうがより生産性を向上させるのです。

マネジメント層が部下全ての小さな貢献を見つけることは難しいです。Ageluなどのコミュニケーションツールを利用し、小さな感謝を見つけることでそのフィードバックをこまめに行うことが大切です。

また従業員エンゲージメントを高める、フィードバックをこまめに行うという意味でもOKRや1on1を導入をすすめることも良策でしょう。

ワークライフバランスを保てる環境整備

この会社で働きたいという気持ちは従業員エンゲージメントを高める重要な要素。そのためにワークライフバランスを保てる環境整備を行うことも必要不可欠。

居心地の良さは従業員満足度の向上につながりますが、従業員エンゲージメントにはつながりません。ワークライフバランスとは経済的自立が可能な社会・健康で豊かな生活のための時間が持てる社会・多様な働き方や生き方を選べる社会と内閣府は定義しております。

企業としても自立できる経済力、プライベートを保てる時間、多様な働き方・生き方を承認することで、従業員エンゲージメントを高めていくことができます。

そのため、様々なサービスを利用した業務効率化や慣習化されたフローを見直すことによる無駄の削減などを推進し、生産性の向上を目指したり、労働時間を適正化させるために適切な業務分担を行う、フレックスタイムの導入やテレワークの推進、福利厚生・社内制度の見直し、人事評価制度の見直しを行うことも必要になります。

従業員エンゲージメントを定期的に調査する

従業員エンゲージメントは概念のため取り組みがうまくいっているかどうか、施策が効果的だったかを検証するのが難しいです。

どの程度取り組みがうまくいっているか、従業員の意識に変化が生まれているか、定点観測する必要があります。

eNPSは従業員エンゲージメントを調査する指標になりますので利用したり、ストレングスファインダーの開発元であるギャラップが世界1300万人の従業員エンゲージメントを測定するために用いられた12の質問「Q12(キュートゥエルブ)」を利用した調査を行うことも必要となります。

ここでは簡単にQ12の質問を表記します。

  1. 職場で自分が何を期待されているのかを知っている
  2. 仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
  3. 職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
  4. この7日間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
  5. 上司または職場の誰かが、自分をひとりの人間として気にかけてくれているようだ
  6. 職場の誰かが自分の成長を促してくれる
  7. 職場で自分の意見が尊重されているようだ
  8. 会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる
  9. 職場の同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
  10. 職場に親友がいる
  11. この6カ月のうちに、職場の誰かが自分の進歩について話してくれた
  12. この1年のうちに、仕事について学び、成長する機会があった

こちらの質問を見てもわかる通り、承認・賞賛・コミュニケーションがエンゲージメント向上に重要であることがわかります。

従業員エンゲージメントは継続が重要

従業員エンゲージメントの高い状態を維持するためには、一時的な施策では意味がありません。高い状態を維持することが企業と個人の成長を促す重要なポイントとなります。

生産性高く働ける環境心身ともに健康な状態 という2つの要素を足すことで、持続可能なエンゲージメント を保つことができます。

生産性高く働ける環境は、業務を行うにあたり必要な権限の委譲(意思決定)や業務量のバランスが影響度が高いとされています。

心身ともに健康な状態とは、従業員自身が行える業務量を把握・理解できる環境の整備が大切です。

持続可能な従業員エンゲージメントは会社が成長し続けるということ。企業の成長と可能性を高めるためにも、一刻も早く従業員エンゲージメントを高めることが重要となります。

この記事を書いた人
名越 和徳

名越 和徳